田舎での安全の話 

NISIKI KOTARO

 私がカミさんの育った部落へ通うようになって かれこれ10年になります。部落のほとんどの人は知り合いですから、もし その部落内に住めば私は完全に安全です。人民の海に守られるわけです。

 生憎と部落の近所に適当な土地が無く、段々離れて ついに10Kmも離れてしまいました。

 引っ越してきた頃は国道沿いなんですが、家がポツンポツンと有る位でした。昼は警察、夜はNPA支配という地区で ちっとも安全じゃない地域です。

 4Kmほど離れた所にスイス人の経営する小さなリゾートが有りました。ここに住む決心をした大きな理由の内に、彼が生き抜けるのなら、私も大丈夫だろうと予測したわけです。彼はリゾートですから、入って来る人を拒めないという弱みが有るので、やられるとしたら彼が先と踏んだんです。

 ところが1年後、本当に彼は殺されてしまったんです。

 強盗はここでは珍しく逮捕されたんですが、私も彼らに一度会って居るんです。孤児の為の寄付とか言って家に来たんですが、物腰柔らかく、とても殺人者には見えませんでした。

 その結果この地区の たった一人の目立つ外国人になってしまったので、いささか慌てました。

      田舎暮らしも結構スリル有ります。

安全の為に何をしているかというと。

 私の所は田舎ですから敷地は2ヘクタール有ります。前の海岸、横の小川の共有地と後ろは国道になってます。当地の方式の高い塀を建てるのは経済的にも出来ないし、折角の自然に塀をするのはイヤですから替わりに、侵入者があれば先にこちらが見つけられるように家の30m四方は芝生で見とうしを良くして有ります。

 犬も結構効力が有るので目下 ドーベルマン一匹と地犬が7匹おります。家には家族6人と従業員8人居るので、人間も沢山います。夜は夜警がおります。人が進入すると自動的にライトが点きます。

 なんて書くと、いかにも厳重に警備されているようですが、ガードマンを雇うと高いので、屋外で男どもが寝てるだけだったりして実体はちょっと違います。

 ですが、大事なことは、上記の様な風評が流れることです。外人を狙う強盗は、こちらでは一応組織犯罪ですから、前もって下調べをします。ですから面倒臭そうだとやって来ません。勿論、衝動的に(特にクリスマス前)正門から重武装でやって来る連中には無力です。

 実は安全に一番大事なことは、本人が”良い人”という評判になることです。お金を使って”良い人”になるのは逆効果ですが、都会でもそうですが、地元民や家族を苛めるという評判になると、危険度は一挙に増します。

 どういうわけか ”悪い人”=”殺しても良い” という方程式があるようです。

 私は元々ケチな”良い人”ですから問題有りません。トラブルの元になるような従業員対策はカミさんに任せて一切タッチしません。しかし最近、家の周りにも人家が増えて、部落風になってきました、一説によると あの日本人がまだ生きているのだから、安全な所だろうと引っ越して来た人が居るそうです。

 家の回りがオープンだと暑くてしょうがないので、そろそろ木を植えようかなと考えるこの頃です。

      フィリピンで安全に暮らすには ”良い人”であること。

nishiki@leyte

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